転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


441 お酒はね、15歳から飲めるんだよ



 みんな揃ったって事で、お爺さん司祭様が給仕のお姉さんにご飯を出してって言ったんだ。

 でもね、お姉さんはちょっと困った顔して、こんな事を言ったんだ。

「すみません。まだ下ごしらえ段階で、お出しするのにはもう少し時間がかかるのです」

「ふむ。確かに夕食には少々早い時間だからのぉ」

 普通はね、宿屋さんに帰ってきてからまずお風呂に入ってゆっくりしてからご飯にする人が多いんだって。

 でも僕たち、錬金術ギルドから帰ってきてそんなに経たないうちに食堂に来ちゃったでしょ?

 だからお料理がまだできてないそうなんだ。

「ならば食事はしばらく待つとして……酒とそのあては出せるのであろう?」

「はい。それでしたらお出しできます」

 でもね、前にお父さんがやったみたいに早く来てお酒を飲む人はいるから、そのおつまみは出せるんだよって給仕のお姉さんが教えてくれたんだ。

「ならばわしは酒、ルディーン君は果実水を飲むとして、おぬしらも酒でよいか?」

「えっ、私たちですか?」

 お酒は飲めるって聞いたお爺さん司祭様は、ニコラさんたちにも飲む? って聞いたんだよ。

 そう言えばニコラさんたち、3人とも15歳を超えてるからもうお酒飲めるんだっけ。

 お兄ちゃんたちはあんまり飲まないけど、ニコラさんたちは冒険者だもん! きっといっぱい飲むんだろうなぁ。

 そんな事思いながら見てると、

「はい。ルディーン君が呑んでもいいというのなら」

 ニコラさんがこんなこと言い出したもんだから、僕はびっくりしたんだ。

「え〜、いいに決まってるじゃないか! 何でそんなこと聞くの?」

「だって私たち、ルディーン君の奴隷みたいな立場だし……」

 そう言ってユリアナさんたち二人の方を見るニコラさん。

 そしたらユリアナさんもアマリアさんも、うんうんって頷いたんだ。

 そう言えばニコラさんたち、所属ってのになったからお金は僕が払うんだっけ。

 でも、そんな事気にしなくてもいいのに。

「大丈夫だよ。そんなにいっぱいお金かかんないはずだもん」

「そうなの?」

「うん! だって前にお父さんがいっぱい飲んでたから大丈夫? って聞いたら、僕たちが食べてきたお菓子よりは安いんだよって教えてくれたんだ」

 アマンダさんとこのお菓子って、確かみんな1個銀貨1枚くらいだったんだよね。

 ニコラさんたちが一人で100杯とか飲んだら困るけど、多分そんなに飲まないと思うから大丈夫だと思うんだ。

 だから大丈夫だよって言ったんだけど、ニコラさんたちはお菓子の値段を知らないからなのかちょっと困った顔に。

 そしたらそれを見たお爺さん司祭様が、

「よいよい、わしが誘ったのだからここの呑み代はわしが出そう。それならば気にせず?めるであろう?」

「ええ、それなら」

 お酒のお金は自分が出すよって言ってくれたおかげで、ニコラさんたちもお酒を飲むことになったんだ。 


「して、あては何が出せるのだ?」

「チーズと生ハムでしたらすぐにでもお出しする事が出来ます。あと少々時間を頂けるのでしたら、薄く焼いた小麦粉でくるんだ軽くつまめる肉料理もございます」

 ニコラさんたちもお酒を飲む事が決まったから、お爺さん司祭様は給仕のお姉さんにどんなおつまみができるの? って聞いたんだよ。

 そしたらお姉さんはこんな風にいくつかの料理を並べた後、最後に変わったおつまみもあるんだよって教えてくれたんだ。

「これはつい先日商業ギルドからレシピを買い取ったばかりのおつまみなのですが」

「ほう。新しいあてとな?」

「はい。詳しい作り方までは申し上げられませんが、小麦粉に香辛料などを混ぜて薄い棒状に焼き、それに色々なディップをつけて食べるというものです」

 とってもおいしいんですよって笑う給仕のお姉さん。

 でもね、それを聞いたお爺さん司祭様は、黙って僕の方を見たんだ。

 だけど僕、なんで司祭様がこっち見たのか解んなかったから、頭をこてんって倒したんだ。

「まぁ、よい。ではすぐに出るというチーズと生ハム。それに最後に進めてくれた新しいあてとやらと、後はこの子でも食べられそうなものを適当に選んで出してもらえるかな」

「かしこまりました」

 そんな僕を見て小さくため息をついたお爺さん司祭様は、すぐに気を取り直して給仕のお姉さんにおつまみを注文。

 そしたらそれを聞いたお姉さんは、解りましたって頭を下げた後、厨房の方へ歩いてったんだ。


「あの〜、司祭様。一つ聞いてもいいですか?」

「何か解らぬ事でもあったか?」

「はい。チーズは解るのですが、なまはむと言うのは一体どんなものなのでしょう?」

 なんとニコラさん、生ハムを知らないんだって。

 これには僕もお爺さん司祭様もびっくり。

 だってさ、生ハムって豚やイノシシのお肉を長い間採っとけるようにって作る保存食なんだもん。

 僕の村だって、ブラックボアのもものお肉で作ったりするくらい簡単なものだから、まさか知らないなんて思わなかったんだ。

「えっと……簡単に言うと、豚やイノシシの肉を使って作る、干し肉のようなものだな」

「ああ、干し肉ですか。それならば解ります」

 ニコラさんはね、聞いた事もない名前のおつまみが出てくるって聞いて、すっごくドキドキしてたみたい。

 でも干し肉だったら、冒険者さんたちが商人の護衛とかで遠くへ行く時によく持ってくものでしょ?

 だからそれを聞いたニコラさんは、それだったら知ってるってほっとした顔したんだ。

「先にお飲み物をお持ちしました」

 僕たちがそんなお話をしてたらね、さっきの給仕のお姉さんがワゴンを押してきたんだ。

 その上には銅でできたバケツと木でできた台の上に斜めに置かれた黒っぽいガラスビン、それと氷と果実水が入ったガラスの水差しが置いてあったんだよ。

 でね、銅のバケツには木の台に載ってるのとは別のガラスでできたビンの頭が、上からにょきって出てたんだ。

「司教様。ワインは赤と白、どちらをお出ししましょう?」

「うむ。今日は少々暑かったからのぉ。よく冷えた白の方がよかろう」

 お爺さん司祭様に言われて給仕のお姉さんがバケツからガラス瓶を取り出すと、ジャランって音がしたんだよね。

 そっか! こっからじゃ見えないけどあのバケツ、中に氷が入ってたんだ。

 司祭様はそれを知ってたから、あっちのワインが冷えてるって解ったんだね。

「そしたらのお嬢様方も、同じ物でよろしかったですか?」

「はっ、はい!」

 僕がそんな事を考えてたら、給仕のお姉さんがニコラさんたちも白ワインでいい? って聞いたんだよ。

 そしたらそれでいいって頷いたんだけど、何か様子が変。

 だから何でかなぁ? って思ってたら、給仕のお姉さんがふたを開けたワインと水差し、それにワゴンの下の段に置いてあったグラスをテーブルに置いて厨房の方へ帰ってったのを見てすぐに

「しs、司祭様。これは一体?」

 ニコラさんはお爺さん司祭様にこう聞いたんだよね。

「これか? 見ての通り、ワインだが」

「ガラスの入れ物に入ったお酒が出てくるなんて、聞いてませんよ。それに器までガラスだし」

 ニコラさんはお酒って聞いて、てっきりエールが出てくるって思ってたんだって。

 なのに見た事が無いお酒が、それもガラスでできたビンに入って出てきたもんだからすっごくびっくりしたみたい。

 そう言えばお父さんも、ここの宿屋さんだとワインじゃなくってエールとか果実水で割った蒸留酒ってのを飲んでたっけ。

 給仕のお姉さんは司祭様を見てワインを出してきたけど、もしかしたらワインを飲む人、あんまりいないのかなぁ?

「先ほど聞かれたとき、同じものでよいといっておったではないか」

「予想外のものが出て来て、対応ができなかったのです」

「なるほど。しかし、出て来てしまったものは仕方なかろう。明日からは違うものを頼むとして、今日はあきらめてこれを飲むがよい」

 今更別のものを注文するとまたまたないとダメじゃないかって、お爺さん司祭様はニコラさんたちに言うんだよね。

 このお酒、お爺さん司祭様がお金を出してくれるでしょ?

 だからニコラさんたちは、諦めてワインの入ったガラスの器を絶対に落とさないようにと慎重に持ちながら一口。

「っ!?」

「何これ、甘い!」

「白ワインは赤と違って渋みが無いからのぉ。それに麦から作ったエールと違ってブドウからできておるから、甘くて美味であろう?」

「はい。こんなお酒、初めてです」

 ガラスの器で飲むのはやっぱり緊張するみたいだけど、それでもニコラさんたち3人はおいしいおいしいってワインを飲んだんだ。



 お姉さんズ、どうやらガラスの器を使う恐怖よりもワインの味が上回ったようです。

 でもこのワインの値段を知ったら、また震え上がるでしょうね。

 なにせこのワイン、設定ではグラス1杯で銀貨1枚するんですよ。

 これは前に泊まっていた宿の3日分以上だったりします。

 どう考えても軽く呑んでしまえるような値段ではないですねw

 因みにハンスお父さんが飲んでいたというエールは普通の店で飲むとジョッキで銅貨3枚、この宿だと冷えたものが陶器のジョッキで出てくるので銅貨8枚という事にしてあります。

 そう考えると、たとえエールでも値段を知ったら飲めなくなってしまうかも?


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